金城満の仕事,沖縄の芸術家,絵画,写真,音楽,美術教育,平和教育,石の声,佐喜眞美術館,画廊沖縄,表現行為,免疫,琉球大学教授

写真、文章、ニュース映像をもとに構成した「石の声」ドキュメンタリーを見る(15分)

日本語LinkIcon EnglishLinkIcon

00.jpg 01_1.jpg 02.jpg 03.jpg 04.jpg 05.jpg 06.jpg 07.jpg 08.jpg 09.jpg 10.jpg 11.jpg 12.jpg 13.jpg 14.jpg 15.jpg 16.jpg 17.jpg 18.jpg 19.jpg 20.jpg 21.jpg 22.jpg 23.jpg 24.jpg 25.jpg 26.jpg 27.jpg 28.jpg 29.jpg 30.jpg 31.jpg 32.jpg 33.jpg 34.jpg 35.jpg 36.jpg 37.jpg 38.jpg 39.jpg 40.jpg 41.jpg 42.jpg 43.jpg 44.jpg 45.jpg 46.jpg 47.jpg 48.jpg 49.jpg 50.jpg 51.jpg 52.jpg 53.jpg 54.jpg 55.jpg 56.jpg 57.jpg 58.jpg 59.jpg 60.jpg 61.jpg 62.jpg 63.jpg 64.jpg 65.jpg 70.jpg

(写真は自動再生しますが、画面上の< >で移動出来ます)





黙々と、ただ石に番号をうつ
その行為の数、20余万
祈りにも似た表現行為。 







 これが、「石の声」の呼びかけ文である。
 沖縄、米軍普天間基地に隣接した佐喜眞美術館前広場に於て1996年6月15、16日で236.095個の石に連番を書き入れ、積み上げていくという行為が開邦高校芸術科の呼びかけで、行われた。
 この数字は、96年時点で把握されていた沖縄戦戦没者数である。しかし、二日間で終えたのは約半分。結局翌週の22、23日まで続行。様々な呼びかけで一般の参加者も増え、延べ六百人が参加。終了は23日、沖縄戦終結の日である「慰霊の日」。正午に、全員で一本づつ線香を供え黙祷を捧げた。


 猛暑の中、石を拾い、フェルトペン等でひたすら番号を書き入れていく。極端なほど単純な作業である。しかしなぜ、これほどまでに多くの人々が四日間にわたり参加したのだろうか。
 石は「番号」という命をこめられ、広場の中心に積み上げられていく。はじめは、赤瓦四枚で最初の「1」を囲み、徐々に瓦を増やしながら、その中へと積み上げられていく。 やがて、その命のカタチは円錐上に小山となり、日に日に肥りだしていった。嬉しいような怖いような・・・、カタチは徐々に量感をもちはじめ、広場をのみこみはじめた。しかも、雷雨で水のはった広場に、夜、うっすらと小山が水面に映しだされ、現実の上唇と水面の下唇が重なり、ものいいたげな表情を闇の中にみせた。
 どうですか、生徒たちは石の声が聞こえたでしょうか?・・・これが各マスコミからの共通した質問だった。

 結論から言うと、「そんな、単純な問題ではない。」なぜならば、我々が耳をもっているという前提が無いからだ。今迄知識として沖縄戦戦没者数を知っていたに過ぎないし、歴史を暗記していたに過ぎないのだから。
 ただ生徒も私も、石を積み上げてみて感じたことは、「耳をつくる行為」だったように思う。これは、他の参加者にも共通した思いであろう。
 最終的に、この表現行為が平和教育と結びつき「新しいかたち」と評されたが、着想は、もっと芸術行為そのものに重きをおいていた。「なるべく単純で膨大な繰り返しの作業」を通して自分そのものと向き合うことだった。作業が単純であればあるほど、人はそのリズムの中に入り込み寡黙になる。黙らざるをえないと言うことは、自分と向き合い対話する。 それが、炎天下、流れるような汗、雷雨にうたれ石に番号が書けない、様々に変化する状況下、生徒たちにも変化がみられた。生徒だけでなく一般の方にも。積み上げる石を納骨するようにそっとおく人や、小山のそばに座り込み撫でる人、ボーと日が暮れてもその場から動けないでいる人。様々である。
 これらの出来事をみて思うことは、単純な表現行為が「祈り」になり、石コロが戦没者一人一人と重なり、「数」がより実感をもった「量」に変化し、「観念」が汗、手のまめ、疲労、身体全体を通して考えた「事」になった。ほんの少しだけだがそう思った。
 芸術が力を持ち、現実とかかわれるのは、人の生き死にと、深くかかわった時なのだと・・・闇の中に積み上げられた「唇」がほんの少し揺れ、囁いているのを、見逃さない目と、その声をきく「耳」を、積み上げたいと思った。

 追記:半年後、「囲い」は取り除かれ「石」は日々、広場に還っている。     

………………………………書籍へリンクLinkIcon

「鉄の記憶」

「迷い鯉」

「石の声」

「壁画制作」